子どもの歯並びやかみ合わせでお悩みの方へ~小児矯正Q&A~

大変うれしいことに、子どものむし歯は減少傾向にあります。
パパ・ママの意識が上がるとともに、正しいお手入れをしている子どもが増えました。
しかし、その一方で咬み合わせに問題を抱えている人は年々増えています。
今回は小児矯正に関するよくある質問に答えながら、小児矯正への理解を深めていただければと思います。

Q. 子どもの矯正開始の目安は何歳ですか?

矯正治療を始める目安は、上下前歯が永久歯に生え変わる時期です。
もちろん、お口の状態によっては、早く始めたから良いというものではありませんので経過観察を行うこともあります。

Q. 成人矯正との違いは何でしょうか?

成長が完了した大人は、すでに出来上がったあごに対して、歯の位置を動かして矯正していきます。
基本的に成人矯正で骨格を動かすことはできません。
一方、成長発育している真っ最中の子どもは、あごやお口まわりの成長を妨げる要因を取り除きながら、バランスのとれた成長を促すことができます。
また、歯の位置だけでなく、あごや骨格の成長を調整することが可能です。将来的な抜歯のリスクを減らすこともできます。
さらに、咬み合わせが悪いと食事でうまく噛めないため、食べるのに時間がかかったり、飲み込んでお腹に負担をかけてしまったりするケースもあります。
この場合は、身体全体を考えて、小児のうちから矯正するとメリットがあるでしょう。

小児矯正のメリットが得られるケース

  • 反対咬合・出っ歯などで、骨格的に早期に治療を開始しした方がよい場合
  • 開咬や叢生で食事に悪影響が多い場合
  • そのまま放置しておくと今後成長に悪い影響を与えると判断される場合

これらは、小児矯正のメリットが大きくなり、成人矯正の治療期間を短く出来ます。

小児矯正の矯正器具

Q. 最近トレンドの「早期治療」メリットは?

早期治療のメリットは3つあります。

1. 成長を利用した治療

歯が生え変わる成長期においては、お口の中の骨格や歯が大きく成長していきます。
その時にマウスピースのような咬み合わせを正しく誘導する装置(咬合誘導装置といいます)をつけて治療することが可能です。

2. 将来的な抜歯のリスクを避けられる

歯が全て生え変わった後、大人になってから矯正を開始すると、歯の動くスペースが足りず動かしきれない場合があります。
その場合は歯を動くスペースを作るために抜歯する可能性があります。早期に治療をすると、あごの成長を促して歯が動くスペースを作ることが可能なため、将来的な抜歯のリスクを回避することができる場合があります。

3. 舌癖・口呼吸などの習慣の見直し

例えば、普段から舌で前歯を押すと、出っ歯になりやすくなるなど、舌の習慣と歯並びは関連性があります。
また、正しい舌のポジションを知ることで、口呼吸から鼻呼吸に治せる子どももいます。
このような習慣は早めに治すに越したことはないでしょう。

Q. 子どもの矯正にかかる費用はいくらくらいでしょうか?

矯正治療の費用は、自由診療のため、医院により異なります。
内容によって異なりますが、東京都内の一般的な費用は、30~70万円程度が多いようです。
当院の矯正費用もご参照ください。

Q. 小児矯正では、失敗することもあるのでしょうか? 失敗の要因は何でしょうか?

小児矯正では、お口の成長を促しながら、正しい咬み合わせや歯並びを作っていきます。
失敗というと、正しい咬み合わせが得られなかったり、綺麗な歯並びにならなかったりするケースを指すでしょう。

原因別に紹介します。

1. 患者さまの協力が得られない

小児矯正で最も多いケースは、協力が得られないケースです。
例えば、マウスピースなどご自身で付け外しができるタイプのものが多いです。
小さいお子様ですとお口の中への違和感から装置をつけることを嫌がる方もいます。
気軽に始められるという点では優れたものですが、装着時間が足りなければ治療の効果はられません。
1日あたりの装着時間を満たすなどの協力が必要となります。
また、舌で歯を前に押してしまったり、上の歯と下の歯の間にはさんでしまう等の舌癖は、歯並びに悪影響を及ぼす場合があります。
この場合は舌癖を治すという協力も必要となります。
このような協力を得られないと、正しい咬み合わせや綺麗な歯並びを作ることは難しくなります。

2. 予測できない成長をした

小児矯正から始めると、成長を見込んで治療計画を立てていきます。
多少の「成長しすぎ・成長しなさすぎ」はカバーできますが、予測できない範囲で成長しすぎ・しなさすぎが起きてしまうと、コントロール不可能になるケースがあります。

3. 治療後のイメージが違った

「他院で矯正したら、もっとひどくなった」という患者さんがいました。
患者さんにとっては、失敗だと認識されていると思います。第三者の私が診れば、治療しなかったらもっと悪化していたことが予想されるケースでした。
このことからも、矯正治療後のイメージが患者と歯科医師で共有できていないと、失敗したと思って転院してしまうケースがあると言えます。 矯正治療は長期にわたるため、信頼して何でも話せるコミュニケーションが大事になります。

Q. 矯正治療は自由料金なので医院によって様々ですが、一般的に安いところは技術が未熟で高いところは高度な技術を持っていると考えて良いのでしょうか?

治療技術と費用は全く関係ありません。
前項でも触れましたが、患者さんと担当医がしっかり話し合えるかをみきわめ、治療を開始するかを決めるとよいでしょう。

さいごに

小児矯正は必ずしもやらなければいけない治療ではありませんが、将来にわたり大きな影響を与えてくれる治療でもあります。
中には大人になってから「子どもの時にやっておけばよかった」となるような方もいるので、少なからず矯正治療に対する正しい知識と、お口の健康に対する意識は高めていっていただけると嬉しく思います。

当院では、小児矯正は、矯正歯科の専門医が担当しておりますが、小児専門歯科医や一般歯科医にかかっている方でも「矯正したほうがいいか」の相談にのることは可能です。
気になる方は相談してみてください。